浅田次郎泣かせる方から笑わせる方まで、どちらも読ませてくれる力量あり。泣かせの次郎、と呼ばれるほど、そっち系の筆は細やかで、あざといほどに切ない書き方。 泣きたい時にはもうこれ!っていうのがいくつもある。 ただし、やんちゃはひねくれもんなのか、ポピュラーになった「鉄道員」なんかより、 「見知らぬ妻へ」「月のしずく」なんかが好き。 「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「シェエラザード」なども感動もの。 しかし、この人のはなんといってもピカレスクモノが絶品でしょう。 「きんぴか」「プリズンホテル」のそれぞれの登場人物とその背景人生と来たら、 もうこれ一冊では書ききれないから、どんどんシリーズになったとしか思えない面白さ。 極道系の方々の、素人にはあり得ないまじめさ、ひたむきさ、一徹さ。 そこから生まれる数々のエピソード、もう筆者の筆の走る音さえ聞こえそうな文章である。 そして、それらの中でもやんちゃが特にお勧めは「天切り松闇語り」シリーズ。 これは、大衆受けねらい、新喜劇風、お涙頂戴風、と悪口いいたくなる位、ちょっと出来すぎ。 でも、エンターテイメントとしては最高でしょう。時は大正ロマン華やかなりし頃、 粋でイナセな盗人達が、天衣無縫な活躍ぶりで文句なしの面白さ。
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